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<かっこよくない優しさがそばにあるから。かっこよくない優しさに会えてよかったよ>          <たとえば誰かのためじゃなくあなたのために>
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とてもアップして好いレベルになるとはいいきれないので
追記に初挑戦阿伏兎夢だお
マイナーなんて...言わせない!(きりっ)
ご覧になる勇者さまは低クオリティ覚悟でおのぞみあれ~



たぶん、荷物になる。
ついていきたいって言ったら、きっと、
阿伏兎さんは優しく笑ってくれるんだけど、神威団長はまたあの笑顔を浮かべる。
殺すよ、とでもいいたげな笑顔を浮かべて、無言の拒否を示してくる。
仕方ないんだ。私が夜兎のおちこぼれだから。
戦闘の才能は夜兎のそれには幾分か劣ってるし、
スピードも力も、女と言い訳が使えなくなるほど酷いレベルだ。
なんでこんなオチこぼれなのかなんて考えれば考えるほど理由は尽きない。

まず最初にあげるなら、他人の所為にするとして、親がいけない。
父も母もしっかりと夜兎の血を受け継いでいるけれど、
幼い私に戦闘練習をさせなかった。
それで練習をしない私も私だけれど、幼い頃から戦っている子と
だらだらとした日々を送っている子では出来が随分と違ってくる。

だけど、そんな私を見つけてくれたのは、すくい上げてくれたのは、
他の誰でもなく阿伏兎さんだ。
ボロぞうきんみたいになって村から追い出された私を、
阿伏兎さんが見つけてくれた。


「なんだその格好。お前さんそれでも夜兎かい?」


そう言って、馬鹿にするでもなく、嘲笑うでもなく、
呆れたように阿伏兎さんは笑った。そのとき間違いなくこの心臓は飛び跳ねたのだ。
阿伏兎さんは行き場のない私に、春雨という居場所をくれた。
おちこぼれの私を春雨のみんなは疎ましく思ったみたいだけど
そんな周りの目が気にならないほど、阿伏兎さんは救いとなっていた。

暇ができたら練習の相手をしてくれたし、
めんどくせーなと言いつつも色んな星のことを教えてくれた。
それになにより、ろくに言葉を知らない私に、
まともに喋ることすらできない私にいつも優しかったんだ。
その都度「好きだよ」と言ったけれどいつもかわされた。

神威団長にはどうやら嫌われているようだけど、
阿伏兎さんと会うのは許してくれるみたいだった。


「阿伏兎に惚れるのは勝手だけど、邪魔になったらすぐ、」
「団長、悪いがこの女だけは殺さないでやってくれ」
「何言ってるの阿伏兎。邪魔になったら殺すよ」
「邪魔にならねェようにするさ」


神威団長は今すぐにでも殺したいというような思いのこもった目で私を見た。
正直言えば怖かった、それに逃げ出したかった。
だけど話の内容が内容で、阿伏兎さんの話なら逃げるわけにはいかない。
そう思って震える足にムチを打ち、立つのも必死に神威団長の話を聞いていたら
かばうように私と神威団長の間に阿伏兎さんが立った。
阿伏兎さんに言い負かされたのか、諦めたのか団長は去っていった。
その後ろ姿が完全に見えなくなるのを確認すると、膝ががくんと折れるのに気付いた。


「おいおい、大丈夫か」
「だいじょぶ、です」
「お前ろくに言葉しゃべれねーんだから、団長に近づくな」
「しゃべる、し、わかる、ます」
「わかります、な」
「わかり、ます」
「そ。・・・ま、無茶すんなってこった」


腰が抜けて立ち上がれない私の隣に、阿伏兎さんはしゃがみこんだ。
ちらりとその横顔をのぞけば、いつも通りの死んだ目に不精髭があったけれど
変わらぬ姿がひどく愛しかった。


「もちっと利口に生きりゃァ、お前さんも幸せになれるってのに」
「りこう、ない、でも、幸せ、よ?」
「あん?そりゃまたなんでだ」
「阿伏兎さん、いるから、となり」


そのとき、本当にそう思ったのだ。
阿伏兎さんが隣にいてくれるなら、こうしていてくれるならば何も要らないと。
周りからの冷たい目にも、団長からのお叱りにも耐えてみせる、そう思えた。



そしてそれは、今も変わらずありつづける。


「ねーねーあぶさーん。地球いきたいー」
「団長に聞けっての」
「うっ、団長怖いんだもん。阿伏兎さんが言ってくれたらだいじょぶよ」


そう言ってにこりと笑ってみせると、あの日みたいに呆れた笑顔を返してくれる。
それでいいの、それでいいのだと、阿伏兎さんにはそれが一番好い。
お日様みたいに笑わないで好い、団長みたいに冷たい笑顔じゃなくて好い、
みんなみたいに下卑た笑顔じゃない方が好い、
阿伏兎さんみたいな、呆れた笑顔が一番、心地良いんだ。
だってその笑顔を浮かべた次には、絶対言ってくれるから。


「しょうがねぇ、おちこぼれのためにも団長と殺りあってくるとしますかね」
「死なないでねー」
「どの口がいうんだ、すっとこどっこい」
「んー・・・と、あ、阿伏兎さん!」
「今度はなんだってんだ」


あのねあのね、たくさん伝えたいことがあるよ
阿伏兎さんが私を見つけてくれてから今まで、もう何年経つのかなぁ?
ありがとうじゃ足りないし、もっと言いたいことがあるの
阿伏兎さんが見つけてくれた日から、私随分成長したでしょ?
ちゃんと喋れるようになったし、神威団長にも睨まれなくなったよ
でもね、一番に言いたいことはね、


「好き、だよ!」


すごく!すっごく!ね!
そう付け足せば、また、笑うんだ。
呆れたような笑顔で、すっとこどっこい、そう言って。
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